長い間ネットサーフィンしていたら、凄く奇妙なものを見つけるときがあると思う。ネットの、オカルトじみたものが好きな人なら、特に分かるはずだ。私は、こういった類のものは見境なく触れてきたが、”normalpornfornormalpeople.com”――「普通の人々のための普通のポルノ」は、まだ覚えている。
このサイトについて、まず最初に疑問に思ったのが、自分で探していたのではなく、つまり
見ず知らずの人からメールを貰って、その存在を知ったことだ。
以下、転載する。
こんにちは
あなたの好きそうなサイトを見つけました
normalpornfornormalpeople.com
人類の為に、このサイトを伝えていきましょう
(典型的なスパムメールだな
URLと最後の一文が興味を引くのだが...)
その日は非常に暇を持て余していたので、パソコンがウイルスにかからない様にし、URLをクリックした。
どこにでもありそうなサイトだった。印象は、といえば、玄人ぶって作った、といった感じだった。ホームにはたどたどしい英語で非常に長く詰まらない文章、また、サブタイトルにはこうあった。
Normal Porn for Normal People、異常な性欲は不要
(ポルノを見に来たのか、(万一だが)信仰に目覚めたのか分からなくなるじゃないか...
だが、ここにある、”Normal People”が何に興奮するのかとても気になった、というのは確かなのだが...)
取り敢えず、画面をスクロールしてみたが、何もない。
どこにもリンクは貼られていないようなのでサイトから出ようとしたその時、
上で述べた”文章”にリンクが貼られているのが分かった
(更新中)normalpornfornormalpeople.com/(意味不明な文字列)
(...。
有害サイトのリンクをクリックすることに時間を費やしていいのか?
...5分だけならいいか
何が出るか見るだけだし...)
出てきたページはさっきまで見ていたものとは全然違うものだった。
やはり、そこにはリンクが...
(私は一体何をしているんだ...
動画ファイルをダウンロードしたみたいだが...)
”peanut.avi”:
一組の男女が犬にピーナツサンドを食べさせる、30分の動画。
犬が食事を再開するまで何度も止めているのが分かる。そのお陰で犬は体調が悪くなったらしい。
「ポルノは一体どこだ?」私には全く分からない。
このサイトの動画は24ぐらい見たが、ポルノらしいものは見当たらなかった。
”peanut.avi”のことをいつものように掲示板に投稿しようとしたが、
既にスレッドは立っていた。その投稿主もまた私と同様、あのメールを貰ったらしい。
掲示板上には(無駄に、)”normalpornfornormalpeople.com”を調べている人々が大勢いた。
この人の経由で更に動画を見たが...。以下、参照。
”lickedclean.avi”
10分で構成されている。前半2分は、業者が洗濯機を直している様子を、
残りは、独りになったのを確認した業者の依頼主が、洗濯機の上の部分をなめ回しているところを
隠しカメラで撮っている。
”jimbo.avi"
5分で構成されている。ひとりの太ったピエロがパフォーマンスを繰り広げる。実際にひどく愉快な動画で、特に彼が椅子を引き寄せ、それが自分の体重のせいで壊れてしまったようにふるまうところなど、最高におかしい。だがラスト30秒ごろになって、映像はいきなり停止し、そのピエロが衣装を身に着けたまま、化粧も落とさず静かに泣いている場面に切り替わる。何か、強迫観念じみたフェティシズムのたまものなのだろうか?
"dianna.avi"
4分間の動画だ。「面接室」とは異なるどこかの部屋で、ある女性が撮影者と会話している。一般的な家屋の一室に見えるが、ダイアナはただ彼女のバイオリンの演奏についてしか話さないので、彼らがいる場所についてそれ以上知ることはまったくできない。彼女は楽器を演奏するが、いっぽうで何かに注意を逸らされ続けている。私はスレッドで誰かが指摘するまで気づかなかったが、背後に設えられた鏡に注意すると、太った男がニワトリの覆面をかぶり自慰をしているのが見える。
"jessica.avi"
同じく4分間で構成された、もうひとつの撮影者視点の動画だ。今回、彼は屋外でもうひとりの若い女性と会話をしている。話題はアウトドアのカヌーについて。視点はときたまズームアウトし、それによって彼らのいる街のストリートがどこかがわかる。だが奇妙なことに、このストリートがどこにあるのか識別できる者は誰ひとりとしていなかった。動画を観ていた人たちは、ヨーロッパ全体からオーストラリア、あるいはフィリピンにまで、世界中あらゆるところに散らばっていたのに、動画の中で映るそれに合致する道や街が見つかることはなかった。
"tonguetied.avi"
10分間の動画。冒頭5分間は、ひとりの年老いた女性がマネキンを可愛がる場面で構成されている。動画は"jinbo.avi"と同じく、半ばほどで映像が切り替わり、今度はいくつものマネキンがカメラの周りを取り巻いている場面になる。照明は薄暗く、女性はどこにも見当たらない。以降、音声も消える。
"stumps.avi"
5分間にわたる動画で、「ダンスダンスレボリューション」(アーケード用の音楽ゲーム)のマット式コントローラーの上で、両脚の無い男性がブレイクダンスを踊ろうとする。"peanut.avi"に出てきた台所を思わせる場所だが、それよりはるかに汚い。どこか見えない場所からラジオの音楽が鳴らされているが、4分経過し、疲労によって男性がマットの上に倒れると同時にそれは止まる。彼は荒々しく息をつきながら、カメラの外にいる誰かに休ませてくれるよう懇願する。この、動画に映っていない「誰か」はひどく立腹し、男性に今までと同じように踊り続けろと命じる。突然動画が終わるとき、この「誰か」が叫び立てはじめるのが視聴者にはわかる。
"privacy.avi"
"dianna.avi"に登場した女性が、「面接室」に敷かれたマットレスの上で自慰をしている。いっぽう"stumps.avi"の男は、ある種の小鬼の覆面を被り、手を使って辺りを這いずりまわる。他の動画ではいつも閉まっていた部屋の扉が開けっ放しにされている。部屋の照明はこの動画における唯一の光源で、廊下は暗い。動画の終わりになって、その暗闇を一匹の動物が素早く走り抜ける。
そして、われわれが最後に観たのは――
"useless.avi"
この18分間の動画では、これまでにいくつかあった、インタビュー形式の動画のひとつに登場していた金髪の女性が、面接室に敷かれたマットレスへと縛り付けられている。叫ぼうとしても、テープで口をふさがれている。7分後、黒いスーツと覆面を身に着けた男が扉を開け、しかし中へは入らない。扉を開けたのは、"privacy.avi"に映った、暗闇を走り抜けた動物を入れるためだ。それは大人のチンパンジーで、毛髪が剃り落とされ、身体の大部分が赤く染まっている。いくつかの傷跡が肩や背に刻まれていて、虐待され、飢餓の状態に置かれたことが暗に察せられる。チンパンジーが部屋に入ると、覆面の男は扉を閉める。チンパンジーはしばらく鼻であたりを嗅ぎまわり――おそらく、失明させられたのだろう――、やがてマットレスに縛り付けられた女性の存在に気づく。彼は狂気にかられて女性をひっかき始める。その「襲撃」は7分間、陰惨なまでに続き、そしてとうとう女性は死ぬ。その後4分間、動画が終わるまで、チンパンジーは彼女の死体の肉を喰いつづける。
……動画が白日に晒されると、スレッドは爆発したような活気で満ちあふれ、人々はそれらについて夜通し議論を交わすこととなった。しかし翌日、その掲示板に戻ってみると、スレッドが消されているのに気づいた。自分で新しいスレッドを立てると、管理者によってアクセスを禁止された。私はこのチェーンメールを寄越し、サイトの存在を知らせた人間に計5回、メールを送ったが、1通たりとも返信が来ることはなかった。
このサイトについて、私は様々な場所で議論をしようと試みたが、しばしばアクセス禁止に追い込まれた。"useless.avi"という動画が騒ぎになってから3日後、サイトそのものもやはり、消去されてしまった。あたかも誰かが管理人に、一連の騒動を報告したかのごとく。
NormalPornForNormalPeopleというサイトがかつて存在したことの唯一の証明は、人々が保存し、別のサイトへ上げた動画と、いくばくかのスクリーンショットだった。いくつかの「趣味の悪い」サイトでは、"useless.avi"は最も人気のある動画として祭り上げられていた。
だがもはや今、あなたがどこにそれらをアップロードしたとしても、normalpornfornormalpeople.comのあらゆる動画は、少ししてすぐ、消されてしまうだろう。